皆さんも自分の好きな映画やドラマの世界に入り込んで主人公の気分を追体験したいと思ったことはありませんか?
好きな映画の舞台やロケ地を巡ってそうした気分を味わうことは個人旅行でしかなかなかできません。
これまでも旅行を計画するときのメインテーマの一つとしてきました。そうした中でも特に印象に残った場所をエリア別に紹介する4回目です。

今回はアメリカの3大都市(ニューヨーク、シカゴ、ロサンゼルス)での体験を紹介します。アメリカ経済の中心地であると同時に、映画を含めたポップカルチャーの発信地でもあり、数多くの映画の舞台となったところでもあります。

ニューヨーク① ~ 映画「ゴッドファーザーPART II」
最初は1974年に公開された”亡き父ビトーのあとを継ぎファミリーのドンとなった三男マイケルの苦悩と少年ビトーが移民としてアメリカに渡りファミリーを築くまでの物語を交差させて描いた傑作映画「ゴッドファーザーPART II」”の舞台となったエリス島です。(1995、2011、18年訪問)
映画のオープニングで故郷シチリア島で家族をマフィアに殺された少年ビトーが移民となってアメリカに到着する場所がエリス島にある移民局です。

1954年に移民局は閉鎖され、以降は移民博物館となっています。
エリス島へ行くにはマンハッタンからフェリーに乗ります。途中には「自由の女神」像があり、映画でも船の上から移民たちが感慨深げに見つめるシーンが描かれています。


自由の女神の隣にエリス島があります。





映画の中で「少年ビトーは入国管理官に名前を聞かれても英語が分からず黙っていたため、名札をみた人が”コルレオーネ村のビトー・アンドリーニ”と言ったのを管理官が勘違いし”ビトー・コルレオーネ”として登録された。」というシーンが印象的です。



この場所を訪れると、アメリカという国がいかに様々な国から移り住んできた人達で成り立っているかが体感できます。映画で描かれたイタリア移民だけでなく、それぞれの民族や個人にドラマがあったんだろうと痛感しました。一方でそうした善悪取り混ぜた切磋琢磨を前に進むエネルギーにしている国なんだなということも感じました。
前作「ゴッドファーザー」、次作「ゴッドファーザーPARTⅢ」も含めてニューヨークの他の場所も映画の舞台として使用されています。
イタリア人街である「リトル・イタリー」はビトーが成長して人望を集めながらファミリーを築いていった場所であると同時にマフィアの抗争により銃撃を受けた場所です。




<映画情報>
ゴッドファーザーPART II(原題:THE GODFATHER: PART II) 1974年
監督 フランシス・フォード・コッポラ
出演 アル・パチーノ、ロバート・デ・ニーロ、ダイアン・キートン
ニューヨーク② ~ 映画「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」
次は1984年に公開された”ユダヤ系移民の少年たちが禁酒法の時代にギャングとして頭角を現わし破滅するまでを少年期、青年期、老年期の3つの時代を行き来しながら描いた傑作映画「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」”の舞台となったブルックリンです。(2018年訪問)
ブルックリンのダンボ地区のマンハッタン橋を背景にした通りを少年時代の主人公たちがギャング気取りで歩いている印象的な場面がポスター等で使用されました。


撮影時から35年たっても、映画のシーンそのままの光景をみることができ感動的です。


通りを歩いていた少年たちがチンピラに襲われ、逃げ遅れた最年少のドミニクが銃で撃たれ「しくじったよ(I’m slipped)」と言って亡くなるシーンは涙を誘います。
ブルックリン地区は90年代までは治安が悪く、リスクを考えるとなかなか個人旅行で近づけませんでした。2000年代以降の再開発や警察官の増強で人気の観光スポットとなっています。



少し歩いてイースト川沿いに出るとマンハッタンの高層ビル群が見渡せます。

さらにマンハッタンとの間に架かるブルックリン橋は歩いて渡ることができます。



主人公たちが成長した後に待ち構える歯車の狂った人生と少年時代の貧乏だけど友情にあふれた姿が対比が印象的に描かれています。ブルックリンの風景が少年時代の彼らの姿とオーバーラップします。
映画の撮影は雰囲気を求めてブルックリン以外の場所でも行われたようです。その一つがカナダのモントリオールです。


駅の場面は作品の時代の雰囲気が残っているということで、フランスのパリ北駅が撮影場所に使われたそうです。

<映画情報>
ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ(原題:ONCE UPON A TIME IN AMERICA) 1984年
監督 セルジオ・レオーネ
出演 ロバート・デ・ニーロ、ジェームズ・ウッズ、エリザベス・マクガヴァン
ニューヨーク③ ~ 映画「恋人たちの予感」
次は1984年に公開された”最悪の出会いをしたハリーとサリーが、男女間に友情は成立するかという課題に振り回されつつ、11年後に結ばれるというロマンチック・コメディ映画「恋人たちの予感」”の舞台となったニューヨーク各所です。(1993、95、2011、18年訪問)
オープニングでサリーの車に同乗しシカゴからニューヨークに向かった二人は、道中口論を重ねた末に到着して別れる場所がワシントン広場です。


5年後に空港で再会しますが、この時もすぐに別れてしまいます。


さらに5年後、二人ともパートナーと上手くいかない状況で再会します。

セントラルパークはこの後も二人が会う場所としてよく登場します。



公園内にはすぐ近くで殺されたジョン・レノンを追悼する「イマジンの碑」があります。

公園の一部は「メトロポリタン美術館」になっていて、ここでも二人は口論を始めます。

その他にもニューヨークの様々な場所が舞台となって話は展開します。



この時のサリーの演技を見て隣の席の女性客が「彼女と同じものをちょうだい(I’ll have what she’s having)」と注文する場面が最も有名なシーンです。
主な舞台はニューヨークですが、二人の最初の出会いの場所はシカゴです。



とにかく楽しめる映画です。映画の舞台となった場所を巡ると二人の速射砲のような会話が思い出され、また映画が観たくなると思います。
<映画情報>
恋人たちの予感(原題:WHEN HARRY MET SALLY…) 1989年
監督 ロブ・ライナー
出演 ビリー・クリスタル、メグ・ライアン
ニューヨーク④ ~ 映画「キングコング」
次は1976年に公開された”南太平洋の孤島に棲息していたキングコングが人間の欲望のためにニューヨークに連れてこられた結果、悲惨な結末を迎えるスペクタクル映画「キングコング」”の舞台となった世界貿易センタービル(World Trade Center)です。(1993、2011、18年訪問)
キングコングはすべての怪獣映画の原点でアメリカでは人気があり、3回映画化されています。


オリジナル版の1933年を皮切りに1976年、2005年にリメークされています。ストーリーは基本的に同じですが、時代背景とニューヨークでキングコングが最後を迎える場所が1,3作目がエンパイアステートビル、2作目が世界貿易センタービルと異なります。
2001年9月11日の同時多発テロで破壊されるまで、世界貿易センタービルはニューヨークのシンボル的存在でした。



110階建ての107階には「トップ・オブ・ザ・ワールド (Top of the World)」という名の展望ルームがあり、マンハッタンの眺望が楽しめました。訪問した93年は2月に地下で爆破テロがあり、入館時の荷物検査等のセキュリティが強化されていました。


9.11のテロによりこの建物は多くの犠牲者を生む惨劇の舞台となりました。

建物の跡地は「グラウンド・ゼロ」と呼ばれ、現在「9.11記念館・博物館」となっています。

そして博物館では様々なテロに関連する展示をみることができます。


他にも展示がありますが、やはり多くの罪のない一般の人々が犠牲になったということが一番胸に突き刺さります。
9.11記念館の隣には全米1の高さを誇る「ワン・ワールド・トレード・センター」が2014年に完成しています。

ワン・ワールド・トレード・センターが完成・公開されるまでテロから11年の歳月がたっていました。


ワン・ワールド・トレード・センターの102階に展望ルームが設置されています。

1993年の世界貿易センタービル展望ルームと2018年のワン・ワールド展望ルームからの眺望を比較してみました。変わらないものもありますが、25年間という月日の流れが感じられます。



映画では、人間の欲望に翻弄されたキングコングが世界貿易センタービルと言う人間の繁栄の象徴の上で怒りを爆発させ、最後は人間に殺されてしまいます。現実では、その舞台となったビルも一部の人間の怒りによるテロで破壊されてしまうという皮肉な展開となりました。
テロはもちろん許せないことですが、その報復と称した戦争でさらに何倍もの人たちが犠牲になったことを考えると、テロの根源にある差別や格差の解消のためにも「うまくやったもの勝ち」の社会を見直す必要を感じます。
展望ルームからの写真に写っていたエンパイアステートビルは前述のように1,3作目でキングコングが最後を迎えた場所です。長い間世界一の高さを誇ったビルも一見の価値があります。


尚、キングコングが暮らしていた南太平洋の孤島はハワイ・カウアイ島のナパリコーストで撮影されたそうです。


いかにもキングコングが住んでいそうな光景ですね。
<映画情報>
キングコング(原題:KING KONG) 1976年
監督 ジョン・ギラーミン
出演 ジェフ・ブリッジス、ジェシカ・ラング
シカゴ ~ 映画「アンタッチャブル」
次は1987年に公開された”名作TVシリーズをベースに捜査官エリオット・ネスが3人の仲間と共に禁酒法の時代に君臨した悪の帝王アル・カポネ摘発に取り組む姿を描いた傑作映画「アンタッチャブル」”の舞台となったシカゴ各所です。(1993、94、2013、16年訪問)
主人公ネスが後に仲間になるベテラン警察官マローンと最初に出会うのがダウンタウンの「ミシガン大通橋(Michigan Avenue DuSable Bridge)」です。



最初の手入れに失敗してマスコミにも叩かれて落ち込んだネスが橋の下段の手摺にもたれかかっているところにマローンが声をかけます。
シカゴ川流域は2001年以降の再開発で遊歩道が整備され、シカゴの中心地の光景が楽しめるようになっています。

映画のハイライトシーンの舞台となった「ユニオン駅」です。



この階段で行われた銃撃戦の乳母車の動きを交えたスローモーションでの映像表現は映画史に残る名シーンの一つだと思います。
ネスがカポネの手下の殺し屋ニッティを追跡するシーンの撮影に使われた「シカゴ文化センター」です。


カポネがオペラ鑑賞しているシーンの撮影に使われたのが「シカゴ劇場」です。


映画単独でももちろん面白いですが、シカゴの町の雰囲気をよくとらえた映画の良さは実際に訪れてみることでさらに際立つと思います。
映画の舞台ということを除いてもシカゴは訪れるべき価値のある観光スポットです。



高層ビルからの夜景もシカゴ名物です。

ミシガン大通り沿いは高級デパートやブティックが並び「魅惑の1マイル(Magnificent Mile)」と呼ばれています

また1990年代のシカゴを代表する人物と言えばブルズのマイケル・ジョーダンです。

<映画情報>
アンタッチャブル(原題:THE UNTOUCHABLES) 1987年
監督 ブライアン・デ・パルマ
出演 ケヴィン・コスナー、ショーン・コネリー、ロバート・デ・ニーロ
ロサンゼルス① ~ 映画「プリティ・ウーマン」
次は1990年に公開された”実業家が気まぐれに一週間のアシスタント契約を結んだ娼婦がエレガントな女性に変身していくシンデレラストーリー映画「プリティ・ウーマン」”の舞台となったロサンゼルスのハリウッド界隈です。(1992年訪問)
実業家エドワードと娼婦ヴィヴィアンが出会うのがハリウッド大通り沿いの「ウォーク・オブ・フェイム”Walk of Fame”」です。



この通りで客待ちをしているヴィヴィアンと仲間の娼婦キットが自分達の縄張りをプレートに書かれている往年のスターの名前(”From Bob Hope, Ella Fitzgerald, Fred Astaire … all the way to Esther Williams.”)で表現する場面はハリウッドらしい映画ファンへのウィットに富んだサービスだと思います。
このエリアの見所にはチャイニーズシアターの入り口前の有名スターの手形があります。


出会った二人はエドワードの滞在先の高級ホテル「リージェント・ビバリーウィルシャー・ホテル」に向かいます。

商談のための会食に女性同伴で参加するためにエドワードはヴィヴィアンとアシスタント契約を結び、彼女は会食用のドレスを買いに高級ショッピング街「ロデオ・ドライブ」に向かいます。





ヴィヴィアンは派手な装いのせいで高級ブティックの店員に見下され入店を断られてしまいます。ホテル・マネージャーの助けでエレガントな服に着替えた後にその店を再び訪れて気づかない店員たちに一言言って去っていくシーンは外見だけで人を判断する人たちを皮肉っていて痛快です。
ロデオドライブのあるビバリーヒルズは全米でも有数の高級住宅地で邸宅を巡るツアーもあります。




今の時代だと「貧しい女性が金持ちの男性と結ばれての幸せをつかむ」と言ったテーマ自体が議論を呼ぶことになりそうですが、1ビバリーヒルズに住むセレブの想像を超える生活を実際に垣間見て現実の格差の大きさを突き付けられると、シンデレラストーリーも一つの夢物語として楽しめると思います。
<映画情報>
プリティ・ウーマン(原題:PRETTY WOMAN) 1990年
監督 ゲイリー・マーシャル
出演 リチャード・ギア、ジュリア・ロバーツ
ロサンゼルス② ~ 映画「ラ・ラ・ランド」
次は2016年に公開された”売れない女優とジャズピアニストの恋のてん末を過去の名作ミュージカルを彷彿とさせる歌とダンスで描いた映画「ラ・ラ・ランド」”の舞台となったロサンゼルス各所です。(1992年訪問)
交通量の多いロサンゼルスの高速道路(Freeway)を封鎖して撮影したというオープニングの渋滞中の車列での歌とダンスのシーンは圧巻です。



ロサンゼルスの高速道路は車線も交通量も多く常に渋滞が発生しているそうです。映画の撮影のために主要高速道路のジャンクションを二日間も封鎖したというのは日本では考えられないことです。
主人公の女優ミアがコーヒーショップでアルバイトしていたのが「ワーナー・ブラザース撮影所」です。

ミアがハリウッドを歩いている時に登場するのが有名な「You Are the Star」の壁画です。

ミアとピアニストのセバスチャンがダンスをダンスを踊るハイライトシーンは「グリフィス・パーク」、「グリフィス天文台」で撮影されました。

この公園から見えるのが有名な「ハリウッド・サイン」です。



映画の中でセバスチャンがミアを誘ってジェームス・ディーン主演の映画「理由なき反抗」を観賞する場面があります。このグリフィス・パークが「理由なき反抗」のロケ地でもあることから、往年の映画ファンを楽しませる演出家と思われます。

公園から見るロスの夜景も名物の一つです。

映画には登場しませんが、ハリウッドには日本でも有名な映画のテーマパーク「ユニバーサルスタジオ」があります。

1990年代の前半は大ヒット映画のアトラクションが次々とオープンしていました。



アトラクション以外にも園内を歩いているだけでも楽しめる仕掛けがたくさんあります。


実際に訪れると、映画の都ハリウッドを擁するロサンゼルスは映画との相性がたいへん良い街だと実感できます。「ラ・ラ・ランド」もロスだからこそ実現できた映画だと思います。
<映画情報>
ラ・ラ・ランド(原題:LA LA LAND) 2016年
監督 デイミアン・チャゼル
出演 ライアン・ゴズリング、エマ・ストーン
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